巡回清掃の料金は、大きく2つの時間を基に算出されます。
ひとつは作業時間。ひとつは移動時間です。
そのため、低コストで清掃料金を抑える場合、まず近隣の業者から当たっていく、ということが重要なポイントとなります。
単純なことですが、業者もやはり時間単位でコストを計算しています。
自社から近ければ近いほど移動にかかる時間は少なくなり、経営効率が高まります。
例えば、物件まで片道1時間かかるとなると、往復で2時間。
この2時間の生産性はゼロです。
このようなとき、業者が考えるのが、「移動時間分のコストを作業料金に転嫁する」という方法です。
本来であれば5,000円の作業ボリュームだとしても、往復の移動コストをオンして10,000円程度に見積もる、とった具合です。
依頼者側からすると「ちょっと高いな」と感じてしまう料金だとしても、業者側からすると労働集約型のビジネスモデルのため、どうしても移動時間を考慮しないわけにはいきません。
また、近隣の業者を選ぶことで価格以外にもメリットが生じる場合があります。
それは、業者の「動き(スピード)がよくなる」という点です。
作業のスピードではなく、アパートやマンションに何かあったときの緊急対応が、近くの清掃業者であればあるほど、早くなります。
もちろん、なかには緊急対応について感度が低い業者も存在しますが、業者側からすれば、例えば自社から5分の場所にある物件で何かが起こったとすれば、「ちょっと様子を見てきます」「すぐ近くにスタッフがいるので確認させます」という対応ができます。
アパート・マンションの共用部では、時に、様々な緊急案件が発生します。
・ゴミ置き場をカラスが荒らして道路が大変なことになっている…。
・一部の照明が消えていて真っ暗になっている…。
・エレベーター内で誰かが吐いてしまって不衛生な状態になっている…。
これらのようなことで対応依頼を受けたとき、業者としては、片道1時間以上かかる場所にその物件があるとすれば、どうしても腰が重くなります。
依頼者側からすれば「料金がかかってもいいので今日中にかけつけてほしい」と思っても、「明日以降で…」という返答がかえってきてしまうかもしれません。
相見積もりは必ずとりましょう。
比較サイトはごく一部の業者しかエントリーしていませんのでおすすめしません。
業者が比較サイトにエントリーしない理由は、大きく2つあります。
ひとつは、単価が安くなってしまう。もうひとつは、作業が粗くなってしまう、という理由です。
この2つは相関しています。
業者は低単価で受注した分、作業内容を簡略化してつじつまを合わせる、という落としどころを見出します。
その結果、行き届いた清掃が行われず、共用部の美観や衛生状態が低下していく、ということになりがちです。
比較サイト経由で依頼する場合、この点は考慮しておく必要があります。
業者は一方で、真面目にコツコツ清掃業務にあたっていれば、自然と口コミや紹介で仕事が増えていくことを知っています。
紹介の場合は、近隣の物件・案件を紹介されることがほとんどです。
比較サイトなどで価格競争をしていけば、やがてそれらが負担となって現場に跳ね返ってくるのがわかっていますので、多くの清掃業者は、比較サイトには消極的です。
相見積もりを取る方法は、やはり、ネット検索になります。
例えば、Googleで業者を検索する場合は、「アパート 清掃 業者」「マンション 清掃 業者」といった具合に「業者」というキーワードを入れることで、検索結果に近隣の地図が表示され、同時に清掃業者も地図上に表示されます。
ただし、ここで一点留意しておく必要があるのが、そこに表示される業者は必ずしもすべての業者が共用部清掃に対応しているというわけではない、という点です。
表示結果には、ハウスクリーニングを専門にやっている業者も混在しています。
それゆえ、手間はかかりますが一社ずつウェブサイトを確認し、絞り込んだ上で問い合わせや見積り依頼をしていくことになります。
依頼者側からすると、相見積もりで気掛かりになることとして、「見積もりを出してもらってしまうと断りにくくなる」という点があるかと思います。
業者によっては見積書を提出した後の営業攻勢が強く、それが疎ましく感じる場合があるかもしれません。
その点を考慮すると、まずは電話などで概算料金を確認するのもひとつです。
最終的な清掃価格は「現地確認後」となるかと思いますが、業者によっては電話口やメールなどでおおよその清掃価格を教えてくれます。
概算料金を確認する際は、以下の点を知らせるようにします。
・アパート・マンションの所在地
・物件の戸数と階数
・ファミリー向けなのか単身者向けなのか
・エントランスのオートロックの有無
・ゴミ置き場、駐車場、駐輪場の有無
・希望する清掃回数(頻度)
清掃内容・レベルは清掃会社によってまちまちです。
安いからといって作業内容を確認せずに任せるのは危険です。
アパート・マンションの巡回清掃や定期清掃というサービスは、業者によってそのやり方がまちまちです。
「掃く」という行為ひとつを見ても、落ちているゴミだけを掃き取るのか、土砂や砂ボコリまで掃き取るのか、とではだいぶ違います。
床の洗浄についても、なかにはサッと床の表面に水を流して作業を終わらせてしまう業者も、残念ながら存在します。
また、職人的で技術があり「腕がいい」としても、顧客の要望を受け入れず柔軟性に欠けたり、対応がずさんだったり、というのでは物足りません。
作業のレベルは実際に頼んでみるまでわからない部分がありますが、事前に作業内容をしっかり確認しておくと、その業者の「仕事に対する姿勢や経験」がある程度つかめるはずです。
共用部清掃の場合、具体的には、以下の点について確認しておくようにします。
・どこまでの範囲を清掃するのか? 建物内だけなのか、外まわりも含むのか?
・建物内は床の清掃だけなのか? クモの巣の除去やガラスの清掃も含まれるのか?
・外まわりの清掃は雑草も対象となるのか?
・不具合がないかの点検や異常点検はしてもらえるのか?
・作業後の報告はもらえるのか? いつ、どのような報告書がもらえるのか?
・どのような人が清掃にあたるのか? 経験者かどうか?
・会社として共用部清掃の経験がどれだけあるのか? 常時何物件取り扱っているのか?
なお現在では、業者に頼む以外に、マッチングサイトを利用して共有部清掃を依頼する方法もあります。
代表的なものとして株式会社リクルートが運営する「エリクラ」などのサービスがありますが、これらを利用する場合でもやはり、上記のような点を事前に確認しておく必要があります。
マッチングサイトで発注する場合、いいスタッフに巡り合えるかどうかは「運次第」の部分がありますが、もし腕のいい作業スタッフに仕事をお願いできるとなった場合、そのコストパフォーマンスはかなり高くなります。
コストを抑える方法として補足しますと、その他にもシルバー人材センターを利用するという選択肢もあります。
シルバー人材センターの時間単価はマッチングサイト以上に低いといえますが、これらのサービスを利用する場合は、業務が経験者によって継続的に安定供給されるのか、という点も考慮しておく必要があります。
担当者が決まったものの1カ月程度で辞めてしまった、というのは、残念ながらよくあることです。
発注単価が安いとしても、その都度その都度再発注をかけ、やってほしい内容を一から説明するのは意外と骨が折れるものです。
どのようなサービス、商品でも「安い」に越したことはありませんが、「安い」には何らかの理由がある場合がほとんどです。
アパート・マンションの共用部清掃についても、「安い」のはなぜなのかを慎重に見極め、安さが後でツケとなって品質に現れないよう注意しておかなければなりません。